交流分析(Transactional Analysis)は、バーンが提唱した心理学理論で、自分の陥りやすい思考パターンや不健全な対人関係を改善するのに役立ちます。

バーンの有名な言葉は、
「I’m OK, You’re OK」(私は大丈夫、あなたも大丈夫)
「人は自分の人生脚本を無意識に生きている」
「すべての人間は自分の人生を変える力を持っている」
カナダ生まれアメリカで活躍した精神科医エリック・バーン(1910-1970)は、人間関係やコミュニケーションを「親・大人・子ども」の自我状態で分析する理論を提唱し、心理療法に革新をもたらしました。
交流分析とは
交流分析は、私たちの考え方(自我状態)を大きく3つに分けました。
親の影響を受けた自分の考え方、大人としての理性ある自分、感情的に行動してしまう子どものような自分を分析します。
この自我状態のバランスが悪いと、他者との交流の中で問題が生じやすくなります。
私たちは自分で人生を選択できますが、無意識のうちに、親から影響を受けた生き方、自分で作った脚本に沿って生きてしまっています。この無意識に気づくことで、より良い選択ができるようになり、人間関係の改善ができると考えます。
無意識に繰り返される人間関係のトラブルの背景にある、自分の思考や行動パターンを分析し、健全な他者との関係を築く方法を提供します。
交流分析の4つの分析とは
- 構造の分析
- 交流の分析
- ゲームの分析
- 人生脚本の分析
構造の分析
構造分析は、個人の自我状態(親・大人・子ども)のバランスを調べ、自分の思考、感情、行動をどの自我状態が支配しているかを把握します。
自我状態は、自分の気持ちや考え方を「親」「大人」「子ども」に分けて考えます。親と子どもはさらに2つに分かれ、自我状態は5つに分類されます。
- 批判的な親:CP (Critical Parent) ・・・自分の価値が勘が正しいと考え他人を評価する態度や言動。
- 養育的な親:NP (Nurturing Parent) ・・・優しく支え、助ける態度や行動。思いやりがある一方で過保護にもなり得る。
- 大人:A (Adult)・・・論理的、現実的、冷静で合理的な思考と行動。
- 自由な子ども:FC (Free Child) ・・・素直で本能的、自己中心的で自由に表現する態度。
- 順応した子ども:AC (Adapted Child)・・・感情や欲求を抑え、従順に規則や他人の期待に従おうとする態度。
自分の中に、このような5種類の自我があると考えられます。
交流分析のエゴグラムとは
構造分析を視覚的に表現したものがエゴグラムです(考案者デュセイ)。親、大人、子どもという自我状態の強さをグラフで示し、どの自我状態が支配的なのかを把握できます。
これにより、自分の思考や行動がどの自我状態に影響されているかを把握でき、対人関係や問題解決の方法を改善する手助けとなります。
交流の分析
交流の分析は、まず、自分が現在どの自我状態(親、大人、子ども)で考えたり行動したりしているのかを意識します。そして、他者とのやり取りの場合、相手がどの自我状態で反応しているのかを分析することです。
例えば、自分がこうするべきだと(親の価値観に基づいて)自分を責めたり、感情的に反応したりする場合は、批判的な親(CP)や我慢している順応した子ども(AC)として反応していると考えられます。
相手に対しても、どの自我状態で反応しているかを見ます。たとえば、上司が命令的に話す場合、その上司は親(CP)の自我状態で話しており、部下である自分は子ども(C)の自我状態で反応しているかもしれません。
ゲームの分析
無意識に繰り返す不健全なコミュニケーションのパターン(=ゲーム)を分析し、そのパターンを認識して改善することを目指します。
ゲームの特徴:
- 無意識的:ゲームは多くの場合、無意識のうちに行われる。
- 不健全なパターン:コミュニケーションの中でネガティブな結果を引き起こすことが多い。たとえば、相手を責めることで自分が正当化される、または過剰に自己犠牲的になりすぎるなど。
- 繰り返し:過去の経験や無意識のパターンに基づいて繰り返されることが特徴。
ゲームの例:
迫害者・救助者・犠牲者のような関係に陥ることがよくある。
- 迫害者: 他人を攻撃したり批判したりする人。相手を責め、非難することで自分を正当化しようとする。相手を支配しようとすることが特徴。
- 救助者: 相手が困っているときに過度に助けようとして、支配的な面を持つ。自分が「助ける役割」を果たすことに価値を感じる。
- 犠牲者: 自分が不幸だと感じ、他人に助けられることを期待する人。自分の問題や痛みを強調し、他者に同情を求める傾向がある。
ゲームをやめるには
パターン(ゲーム)を認識し、それが不健康であることに気づき、意識的にそのパターンを止めることが必要です。
- 自分がどの役割(迫害者、救助者、犠牲者)をとっているか認識する。
- 冷静に状況を振り返り、健全な選択肢を見つける。
人生脚本の分析
幼少期に親や周囲の影響を受けて無意識に作り上げた「人生の物語」です。人生脚本は、自己認識や行動パターン、対人関係の仕方に大きな影響を与えます。
人生脚本は、過去の経験に基づいて自分の人生の進行方向を決定するものの、しばしば無意識に従うため、当人はその存在に気づかない。
例えば、家庭で「努力しないと愛されない」と学んだ子どもは、大人になっても無意識にその信念に基づいて行動します。
交流分析では、行動パターンを明確にして、今の行動にどう影響しているかを考え、人生脚本を見直し、新たな選択をできるようにします。
交流分析のストロークとは
ストロークとは、心理学的には、他者からの「反応」や「承認」という意味で使われます。
人は肯定的なストローク(褒められる、感謝されるなど)を求める一方で、否定的なストローク(叱責、批判、無視されるなど)も受け取ります。
人とのやりとりで得られる心理的な承認であり、自己肯定感や人間関係の質に大きな影響を与えます。
交流分析の相補的交流とは
相補的交流は、相手と自我状態が一致する交流のことです。例えば、大人として理性的に話しているときに、相手も大人の自我状態で返事をする場合、スムーズにコミュニケーションが進みます。
交流分析の基本的な立場(Life Positions)とは
自分と他者に対する基本的な態度。
- I’m OK, You’re OK(私は大丈夫、あなたも大丈夫)自分も他者も肯定的に捉え、協力的なコミュニケーションができる健全な状態→自己尊重と他者への尊重が成り立つ。
- I’m OK, You’re not OK(私は大丈夫、あなたはダメ)自分に問題がないと感じ、他者に対して否定的・批判的な態度を取る状態→対人関係において衝突を生むことが多い。
- I’m not OK, You’re OK(私はダメ、あなたは大丈夫)自分に自信がなく、他者に依存的・従順な態度を取る状態→他者の意見に過剰に左右される。他者に対して受け入れられることを強く求める。
- I’m not OK, You’re not OK(私はダメ、あなたもダメ)自分も他者も否定的に捉え、孤立や絶望感に繋がるネガティブな状態→社会的な関係を築くのが困難になる。
交流分析まとめ
- 自我状態(「親」の内面化したルールや価値観、「大人」の論理的思考、「子ども」の感情的反応)
- ゲーム(こじれたコミュニケーションパターン)
- 人生脚本(幼少期に形成された、無意識に従う行動パターン)
といった概念を用いるのが交流分析の特徴です。