パーソンズの特性因子理論|キャリアカウンセリング・職業選択理論

パーソンズの特性因子論(Trait and Factor Theory)は、特性と職業特性のマッチングを提唱しました。

現代のキャリアカウンセリングや職業選択理論の基盤を築き、心理測定学の発展に寄与した理論です。

現代の職業適性検査やAIを活用したデータ駆動型キャリア支援プラットフォームでも、特性因子論の考え方が採用されています。

特性因子論を提唱したアメリカのフランク・パーソンズ(1854-1908)は、社会改革運動家・教育者として知られ、貧困層の人々や若者、移民の生活改善を目指して活動。職業選択の支援を通じて、社会の不平等や格差を是正しようとしました。

 

パーソンズ自身は高学歴の家系に育ち、15歳で大学へ進学、3年後には卒業、のちに弁護士資格取得。有名な言葉「丸いクギは丸い穴に」=適材適所。

職業選択において重要な3つの要素のマッチング

  1. 自己理解:自分の特性(能力、興味、価値観など)をよく知ること。
  2. 職業理解:各職業が求める要件(必要なスキルや性格、仕事内容など)や環境を知ること。
  3. 理論的推論:自分の特性と職業の特徴を比較し、最適な一致を見つけること。

特性因子理論

特性因子理論は、職業選択理論のひとつで、「その人に合った仕事を見つけるためには、その人の性格や能力と、仕事の特徴をマッチさせることが大事だ」という考え方です。

フランク・パーソンズの著書『Choosing a Vocation(職業選択)』(1909年)で職業選択を科学的に考える基礎を築き、特性と職業特性のマッチングを提唱しました。

これ以前には、職業指導を専門とする制度やカウンセリングの枠組みが存在しませんでした。また、個人の適性を評価する手法が確立されていなかったため、職業選択は経験や直感に頼ることが一般的でした。

特性(Trait)とは

特性とは、個人が持っている特徴や性格、行動の傾向と定義されます。

特性は個人の能力や感情、行動に現れる一貫したパターンであり、直接観察できる特徴のことです。私たちが普段「その人は〇〇な性格だ」と感じる部分にあたります。

例:
外交的(社交的)
内向的(静かな性格)
誠実(責任感が強い)
感情的(すぐに反応する)

これらの特性は、行動に現れるため、目に見えて認識することができます。

因子(Factor)とは

因子とは、個々の職業に求められる能力や要素を意味します。

・職業に求められるスキル
・実際に仕事で求められる具体的な要求
・職業の特徴や職務の要件

複数の特性が相互に関連して全体を形作る

複数の特性や要素が集まり、相互に関連し合って一つの全体を成すという考え方を「コンスタレーション(constellation)」と言います。

語源は「con-」(一緒に)と「stella」(星)から成り、星々が集まって形成される「星座」を意味します。

特定の職業で成功するためには、必要な特性がどのように集まっているか(コンスタレーション)が重要です。

人のパーソナリティや職業の特徴も、単独に独立するのではなく、複数の要素が集まって一つの「全体的な性格」や「職業に求められる能力」として成り立っています。

特性因子理論の問題点・批判される点

・機械的すぎる:特性と因子を単純に一致させる方法は、個人の多様性を無視している。
・個人の成長無視:現在の特性だけで職業選択を決定し、個人の発達・進化を考慮していない。
・「適職」が過度に単純化:現代のキャリアは一つの職業に収束せず、複数の役割を果たすことが求められることが多い。

まとめ

特性因子論は、「人の特性と職業要件の一致」を提唱し、心理学や職業選択に関する研究に多大な影響を与え、現代でもキャリア支援や心理測定、パーソナリティ研究における基本的な枠組みとして活用されている。

・フランク・パーソンズは個人の特性(能力、興味、価値観)を科学的に分析することを提唱した。

特性は行動から観察できる性格や能力、その人の傾向。因子職業の特徴や職務の要件

・科学的手法に基づいたデータ分析により、特性と職業選択の関連性を理解しようとして、因子分析法(数理統計手法)を発展させた。

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