小説「そして誰もいなくなった」の感想・おもしろかった6つのポイント(ネタバレなし)

そして誰もいなくなった

有名な小説「そして誰もいなくなった」(アガサ・クリスティ著)を読みました(オーディブルで耳で)。タイトルは聞いたことあるけど内容は全く知らず、サスペンス興味ゼロでしたが、楽しめました。

推理小説とか通常は全く読まないので、犯人とか伏線とか絶望的に分からないので、最初は「金田一少年の事件簿みたいな展開だな〜」くらいの感想でしたが、読み終えると「人間の性ってそうだよな〜」と思う興味深い点がいくつかあったので書き留めておきます。

誰もが大なり小なり人生で何かしらやらかしている

「そして誰もいなくなった」では、他人の人生を妨害してしまった人たちが集められていますが、人を死に追いやってはなかったとしても、誰でも人生では何か後ろめたいことがあるだろうな〜と思いました。

自分だってバレないで墓場まで持って行きたい汚点の一つや二つあります。汚点の一つもない人生を送ってきた人などいるだろうか?誰だって大なり小なり何かしらないだろうか?

人を傷つけたり、思いもよらぬ被害を他者に与えてしまったり、誰でも人ごととは言えないのではないでしょうか。

本気で他人の痛みを感じない人がいる

なにかしら皆やらかしてきた過去があるとしても、それをどう捉えるかは全く人によって異なるというのが興味深いところ。罪の意識がある人、後ろめたく感じて思い悩む人がいる一方で、全く罪の意識がない人もいるわけです。本気で自分も悪かったなーなんてミジンも思わない人。

自分は正しい、清廉潔白だと疑いなく、確固として信じ続ける人。それはそれですごいなと思うんですが、なにかしら脳の機能が生まれつきそうなってしまってるのかもしれないなとも思い。認知が歪んでる人、共感能力が欠けている人。サイコパスとか。脳がそうだから良いとか悪いとかではなく、ある程度そういう人たちがいる、っていうのが事実ということです。

一定数いるんだよなー、というのが「そして誰もいなくなった」の登場人物にも数名出てきます。

上手い話を自分に都合よく解釈して信じてしまう

なんかおかしいな、はっきりとした確証がないのに、上手い話を都合よく信じて乗ってしまうということ。「そして誰もいなくなった」では、招待や仕事の依頼などさまざまな理由で、降って湧いた幸運にのせられて人々が島に集まります。

不思議だなと思いつつ、でももしかしたら、と、ノコノコとやってくるわけです。棚ぼたのような話を信じたい、自分は大丈夫だろうと過信してしまう人間の性

都合よく解釈して幸運を受け入れたい、というのは、さまざまな詐欺やウマイ話に乗せられて痛い目を見る人たちが今でもいるように、いつの時代も世界共通あるあるであり、自分は絶対乗らないなんて言えないです。

言われたことをやり続ける方がラク

「そして誰もいなくなった」では、悲劇が起こった究極な状況でも、以前に言われた任務、自分の仕事をし続ける人がいるのですが、これは言われたことを遂行し続ける方がラクという人間の習性なのかなと思いました。悲しんだり怒ったり、感情が爆発して取り乱したりするよりも、「やれ」と命令されたことをやり続けることを選ぶ。

別にやらなくても良くない?ということを考えて新たな行動を選択するよりも、変な状況でも今までやっていたことをやり続ける、そんな風にも見えました。

他人に気づいて欲しい認められたい欲求

「そして誰もいなくなった」では自己顕示欲が描かれています。他人に認めて欲しい、自分の頭の良さを周囲に世間に分からせたいという欲求。

また、自分の信じる正しさのためなら人の命も奪っていいという考え。自分の信念を突き通す、自分勝手な正義を振りかざす、極端で柔軟さのない考えは、強力で恐ろしいなと思いました。

時代背景を反映する差別がえげつない

小説「そして誰もいなくなった」は、1939年にイギリスで発行された最初の英語の題名は「Ten Little Niggers(10人のくろんぼ)」で、今では絶対NGな差別的なタイトルだったというのがおもしろかったです。小説の中でも黒人差別な表現が発せられます。1940年にアメリカで発売される際に、このタイトルではマズい、と今の「And Then There Were None(そして誰もいなくなった)」に変更されたそうです。

また、小説の中に登場する童謡「10人の小さな兵隊さん」も、もとは、童謡「10人のインディアン(英語:Ten Little Injuns)」が元になったと言われていて、これもまた原住民差別ですから、今ではNGです。

黒人や先住民と白人の命は平等ではないというのが当たり前だった時代の本なんだな〜と、感じながら読むと興味深かったです。自分だってその時代にいたら、何のためらいもなく差別する側に加担していたかもしれないし、差別されて打ちひしがれていたかもしれません。酷いことがあったことは、あったこととして、隠さずに知れるのは大事なのではないかなぁと思います。

まとめ

そして誰もいなくなった

推理小説を読み解くスリリングな部分は、私は得意ではないので何の感想もないのですが、描かれていた人間のそれぞれのパーツを興味深く味わいました。

  1. 誰もが大なり小なり人生で何かしらやらかしている
  2. 本気で他人の痛みを感じない人がいる
  3. 上手い話を自分に都合よく解釈して信じてしまう
  4. 言われたことをやり続ける方がラク
  5. 他人に気づいて欲しい認められたい欲求
  6. 時代背景を反映する差別がえげつない

普段読まないジャンルもたまに読んでみるとおもしろいなと思いました。

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