ベックらの認知の歪み理論とは?抑うつは認知の障害、独特なネガティブ思考 – 臨床心理学

アメリカの精神科医アーロン・ベックの「認知の歪み理論」についてまとめました。

ベックの認知の歪み理論の元となったエリスのABC図式

【A】Activating Events
悩みを誘発する自分の周りで起きた出来事

【B】Belief
その出来事の受け取り方が極端(不合理な信念)
“しなければならないことができない私は生きる価値がない”

【C】Consequence
結果として抑うつ感情を生み出す

ベックらの認知の歪み理論とは

従来、抑うつは感情の障害と考えられていました。

しかし、1976年にベックの発表した「Cognitive therapy and the emotional disorders」の「認知の歪み理論」では、抑うつの本質は、認知の障害であり、そこから感情の障害が生じると考えました。

そのためベックは、抑うつ的な認知を変えれば、抑うつ感情は抑えることができると考えました。

【A】Activating Events
ネガティブな出来事、ストレス

【B】Belief
出来事に対する認知
・自動思考(抑うつ認知の三大徴候)
・推論の誤り
・抑うつスキーマ

【C】Consequence
抑うつ症状・感情

抑うつ認知の三大徴候とは

自動的に湧いてくるネガティブに歪んだ考え(自動思考)で、深く考えた末ではなく、根拠もなく自分がダメだと思う。自分に自信が持てない(自己)、周囲との関係を悲観的に考える(世界)、この先も将来も絶望的(未来)

自己・世界・未来の3つの領域がネガティブ思考に占領されている状態が、「抑うつ認知の三大徴候」と呼ばれる。

抑うつ的な人の体系的な推論の誤り6つ

6つの体系的な推論の誤り
恣意的推論:根拠がないのにすぐネガティブな結論を出す
選択的注目:些細なネガティブなことだけ重視して、明らかな大きなものを見ない
過度の一般化:狭い経験から広範囲なものに対して意識的に結論を出し思い込む
拡大解釈と過小評価:ものごとの意義の評価や重要性を誤る
個人化:他人のネガティブな出来事を自分に関係づけて考えてしまう
完全主義的・二分法的思考:ゼロか百か、白か黒か、という極端な考え方

自動思考を生む抑うつのスキーマ

抑うつのスキーマ(素因)→自動思考→抑うつを生む

抑うつスキーマとは、ネガティブな信念や態度。潜在的にあり、永続的で症状とともに変化しない、抑うつ人格の特性。
・〜すべきである
・いつも〜でなければならない
・〜か〜の2択しかない
という歪んだ考え方。

認知の歪み理論まとめ

ベックらの認知の歪み理論は、認知を変えれば、不具合が出ている感情の状態が抑えることができるという考え。

抑うつ的な認知とは:
・自己・世界・未来のすべてがネガティブ(抑うつ認知の三大徴候)で、それが自動的に上がってくる。(自動思考
・極端で、根拠がない決めつけ、思い込みが激しい。(推論の誤り
・〜べき、という不寛容で選択肢の少ない信念を持っている。(抑うつスキーマ

参考文献:「自分のこころからよむ臨床心理学入門」丹野義彦・坂本真士著

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