ネガティブなことがあると自分のせいだと責め続け、ポジティブなことがあっても喜ばない考え方の型「抑うつ的自己注目スタイル」についてまとめました。アメリカの社会心理学者のトム・ピジンスキーとジェフ・グリーンバーグが発表した理論です。抑うつになりやすい、落ち込み気分が続いてしまう、自分への考え方を続けてしまうその理由と対処法とは?
抑うつ的自己注目スタイルとは
例えば、事故や災害で家族を失って、ショックに打ちひしがれ、今まで通りの生活が壊れる。どうしようもなかった状況であったにもかかわらず、家族を失った原因は自分のせいだと責める。過去の悲劇に対して「あのとき私がああしていれば…」と考えるが、失った人が戻ることはない。他に良いことがあっても、それには注意を払うことがなく、他に起きた悪いことに注意を向け、また自分のせいだと考える。自分は何をやってもダメで価値のない人間だと悲観的な考えが持続する。
アイデンティティや自尊心の源になる対象を喪失する
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強いネガティブな感情が起こる
自分の通常営業ができなくなる
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喪失した対象を回復したい「自己調整」してみる
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修復できない、取り戻せない
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自己調整のサイクルから抜けることができない
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喪失について過度な自己注目が起こる(自分自身を振り返る)
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ネガティブな出来事について考え続ける(自己注目)
ポジティブな出来事については考えない(自己注目を避ける)
「抑うつ的自己注目スタイル」
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ネガティブな感情の増大
・原因は自分のせい
・自分を非難する
・自尊心低下
抑うつ症状が生じる
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ネガティブな自己イメージの強化
ネガティブな出来事で自分に注目する
抑うつ的自己注目スタイルの人はネガティブなことがあると、
・不快な感情が高まる
・原因を自分のせいにする
・自尊心が低下する
・やる気を失う
ポジティブな出来事では自分への注目を避ける
抑うつ的自己注目スタイルの人はポジティブなことがあっても、
・喜ばない
・良いことを自分の手柄とは考えない
・自尊心が高まらない
・やる気はわかない
抑うつでない人はポジティブな出来事の後自分に注目する
抑うつ的でない人は、ポジティブなこと(他人に褒められるとか)があれば、嬉しい気持ちになって、自分捨てたもんじゃないな〜、モチベーション向上につながったりするものでしょう。
しかし、抑うつ的自己注目スタイルの人はそういう受け取り方をしないわけです。ネガティブな出来事があった後にばかり自分に注目して、原因追及やどうしたら回復できるかを考える傾向がある。
がっかりすることを避けるために悲観的でいる
なぜ、わざわざネガティブなことに注目して自分を批判的に考えることがやめられないのか?それには大きく2つの理由が考えられている。
①悲観的に自分を捉えてネガティブな自己像を強化しておくことで、失望や幻滅を味わうことを避けられる(期待してまたガッカリするのは辛い)
②失ったものを回復しようと自己調整(自己制御)を努力し続けているので、ポジティブな出来事への注目は努力を邪魔するものと考える
私ごとですが、この①も②もその通りすぎて笑っちゃいました。自分ができないこと、うまくいかないこと、思うようにならないことは、全て自分のせいで自分が悪いから仕方ない、としているので期待(楽観視)せず、がっかりもしない、と考えています。
そして、全ては自分が悪いからネガティブな現状があると考えているので、自分は向上しなくてはならない改善しなくてはならないと思っています。なので、もし人から褒められたり何かうまくいったりしても、それは本来の自分ではないと考えて、称賛や良い結果は受け入れられません。
抑うつ、落ち込みを軽減する効果的な方法
スーザン・ノーレン・ホークセマ(Nolen-Hoeksema)心理学教授の報告によると、落ち込んだ気分への対処方法は、「考え込み」よりも、全く無関係な行動をする「気晴らし」が効果的で抑うつ気分からの回復が早いそうです。
自己から注意を逸らすのが、対処法になるようです。
参考文献:「自分のこころからよむ臨床心理学入門」丹野義彦・坂本真士著