アカデミー受賞映画『Everything Everywhere All at Once』感想・ネタバレなし

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 備忘録

アカデミー賞7部門受賞作を、アメリカ映画『Everything Everywhere All at Once』を映画館に観に行って来ました。予備知識ゼロで何も知らずに期待せず観て、新鮮に驚きと笑いを楽しみました。

マトリックスとジャッキーチェン映画に、主役はアジア人中年夫婦で、戦いのシーンでは必ず“予想外な変なこと”が伴うので、笑いが絶えませんでした。でも話の軸は家族や人生について。クレイジーなのに、普遍的で何かしら共感できる部分のある映画でした。

『Everything Everywhere All at Once』とは

日本タイトルはそのまま『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』みたいです。

米国のアジア人家族のストーリー。経営が傾いている自営業のコインランドリー、母親のことを名前で呼び関係がぎこちない娘、頼りない夫、介護が必要な父を抱えた中年女性が主人公で、現実と宇宙(別世界)を行き来しながら、アクションシーンが繰り広げられます。

オリジナル音声は英語と中国語


映画『Everything Everywhere All at Once』は、米国の中国系移民の家族の話なので、役者たちは英語と中国語で喋ります。

映画館ではオリジナル音声だと現地語の字幕がついていますが、私は現地語の字幕が1割も読めないので、中国語の会話が始まると、話を見失いました。それでも全体像はざっくり掴めて、ストーリーは十分楽しめたので、何だったら意味がわからず子供が観ても楽しめるくらいかもしれません。

おもしろかったポイント


おもしろかったポイントは
①SF映画、アクション映画が好きじゃない人でも楽しめる
②マイノリティ、家族、人生など、誰もが持つ普遍のテーマに共感できる
③主人公が何にも秀でていない

自分はSF映画もアクション映画もあまり好んでみないのですが、ストーリーの軸が家族の関係と主人公の人生に戻ってくるので、迷子にならず興味を失わず見続けられました。マトリックス+ジャッキーチェン+ファミリー+コメディ(+スピリチュアル?)といった感じ。

悪の勢力と時空を超えて戦ったりマトリックスのような設定ですが、マトリックスよりも完全に低予算なカンフー映画風がおもしろいです。一般的なアクション映画では、白人の美男美女がメインですが、この映画はアジア人中年夫婦がメイン、かつ戦いのシーンでは必ず“予想外な変なこと”が伴うので、笑いが絶えません。

SFらしい現実世界と並行した別世界がいくつもあり、もしあの時こうしていたら全く違う人生があった、という主人公の別の人生が複数描かれています。こういう複雑な展開になると、私はどこの世界が何だったか、誰が誰だか分からなくなってしまうのですが、この映画はメインの世界に頻繁に戻ってくるので気が遠くなりすぎず意識を保って見れました。

また、登場人物はアジア人家族なので、家族関係の描かれ方が日本人にも共感しやすい“愛情表現の少なさ”で。ハグをしないキスをしない、愛情を言葉で伝えない、ほめない、太っていることをすぐ指摘する、など、アメリカ映画だけど遠すぎず、「あるある〜」と身近に感じられるところもおもしろいです。

個人的におもしろかったのは、主人公女性は“何も得意じゃないし何にも秀でていない”と何の才能もないと身も蓋もないことを言われるのがおもしろかったです。「そうはいっても何かしらあるじゃない〜」とキレイゴトになりそうですが、ないのです。

まとめ

映画を見た後に、Youtubeでこの映画の監督二人が喋っているのを見たのですが、インディー映画なので限られた予算の中、撮影場所や撮影方法をかなり工夫して、費用を抑えて、でも見応えのある映画を上手に作ったのだなというのがわかりました。SF・アクション映画に欠かせない映像技術の部分は、友人たち5人がコロナ禍にそれぞれの自宅でやったというのだから驚きです。それが実現したのもこの監督たちがミュージックビデオの仕事をしていて低予算で限られた時間の中、工夫して撮影することを経験していたからのようです。

まとめ。マトリックスとジャッキーチェン映画に、ファミリーものが加わったような、幅広い人が楽しめる映画だと思います。随所で予想もしない全力のくだらなさが織り込まれていて笑えると同時に、人生や家族のことで考えさせられる部分もあります。

私はオリジナル音声+スペイン語字幕で、中国語会話の部分がさっぱりわかりませんでしたが、分からないまま観ても十分興奮の2時間でした。今度は、ストーリーの解説や背景を知って、もう一回フル字幕で観て楽しみたいです。

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