アメリカの刑務所でポージティブ・チェンジ・プログラム(Pawsitive Change program)という受刑者が保護犬のトレーニングをするプログラムがあります。暴力事件など重い罪で長年収監されている受刑者と、人間に捨てられて殺処分間近の犬が共にトレーニングを行います。
この仕組みがwin-winすぎて素晴らしいのでまとめてみます。
Pawsitive Change programとは
このプログラムは、米国カルフォルニア州の刑務所で行われている更正プログラムです。国や州が主導で行っているとかではなく、民間の動物保護団体が自費(寄附金)で行っています。
ポージティブ・チェンジ・プログラムのPawsitiveは、動物の足を意味するPaw(ポー)とポジティブの造語です。
犬のトレーニング技術を受刑者が学ぶことで、就労支援になると同時に、犬の里親が見つかりやすくなります。何よりも、人間も犬も、精神的な成長と社会性が身につくことが注目されています。
プログラムの創設者は元中毒者
このプログラムの創設者は元アルコール中毒、薬物中毒、薬物の売人をしていた過去を持つZach Skowさんです。Zach Skowさんは、20代後半で末期の肝臓病になり余命3ヶ月と宣告された時、犬の存在により救われ、健康を取り戻した経験がある方です(肝移植は不要になったほど)。
アルコールとドラッグを断ったZachさんは犬の保護活動を開始(Marley’s Mutts Dog Rescue)、その後このプログラムPawsitive Change programを始められます。
受刑者と捨て犬を救う刑務所プログラム
カルフォルニアの5カ所の刑務所と女子少年院1カ所で行われ、プログラムは、期間は14週間に渡ります。
動物保護施設で殺処分が迫っている犬の中から、人間への不信感や社会性のなさから、“問題がある”と言われる貰い手のない犬が選ばれます。
受刑者は、人間から捨てられ“問題がある”と言われた犬と対面して、無条件の愛情、信頼関係の構築、相手の感情・自分の感情、コミュニケーション、忍耐、訓練することなどについて学んでいきます。
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受刑者は殺処分間近の犬に共感するかもしれませんし、犯罪者への偏見のない犬の態度に癒されるのかもしれない、と想像します。
出所後に仕事に就けて、再犯率ゼロ
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「犬と受刑者のリハビリテーション」と言われるPawsitive Change program。
2021年の時点で、受刑者650人・犬250匹がプログラムを修了。
50人以上が刑務所から釈放され、再犯率は0%。
受刑者はドッグトレーナーになったり、ペットサービス産業で就職することができ、出所後にすぐに社会復帰が可能となります。
年間200万匹の犬が殺処分されている米国で、わずかでも命を救うことができる、犬を買わずに引き取ろうという啓蒙活動にもなります。
win-winなプログラム
貰い手のいない捨て犬がトレーニングされ新たな飼い主が見つかり、受刑者がすぐに社会復帰でき、再犯により刑務所に戻ってしまうことを防げるというwin-winなプログラムです。
今ではメディアに取り上げられたり注目されるようになったプログラムですが、始めた最初の頃はどこの刑務所にも受け入れてもらえず大変だったようです。
刑務所に入る人が減れば、捨てられる犬が減れば(捨てる人間が減れば)、何よりですが、そうはすぐには変わりません。しかしながら、今どんな状態にあろうが誰もがチャンスを与えられたらどんなに素晴らしいだろうかと、思わずにはいられないプログラムです。