抑うつになぜなるのか?米国のリン・イボンヌ・エイブラムソン(Abramson)心理学教授らが発表した3つの理論、帰属理論、改訂学習性無力感理論、絶望感理論についてまとめました。
抑うつになる理由は?エイブラムソンらの帰属理論
帰属理論とは、「出来事の原因を何のせいにするか?」で決まるという理論。
原因を他者や周囲の状況に関係すると考えるか、全て自分自身のせいだと考えるか。原因が何のせい(=帰属)と考えるかを「原因帰属」といい、それによって抑うつ的な状態になりやすいかどうかが関係するという考え方。
エイブラムソンらの改訂学習性無力感理論
自分が行動しても結果のコントロールは不能だ、ということを覚えてしまった(学習した)ために、「やってもダメだ」という無力感を感じることを「学習性無力感」と言います。
しかし同じ体験があっても、人によって抑うつになる人・ならない人がいる。なぜか?
1978年に発表された、エイブラムソンらの「改訂学習性無力感理論」は、コントロール不能だ思うことそのものが抑うつ状態に直結するのではなく、コントロール不能だという結果の原因を何とするか、で抑うつが生じるか生じないかが決まると考えます。
行動した→結果に結び付かなかった→コントロール不能だと思うかどうか
例えば、一生懸命勉強したけど、試験に合格しなかった
ここに、本人が「何をやってもダメだ」「コントロール不能だと思うこと」が必須条件→抑うつの発生
原因帰属について分析する3つの次元
①内在性の次元
コントロール不能の原因が自分(内的)にあるか、自分以外(外的)にあるか?
内的要因:能力、性格、努力、気分、苦手意識
外的要因:社会制度、他の人、運
②安定性の次元
その原因はいつもコントロール不能な結果をもたらすのか?
安定的な要因:能力、性格、苦手意識
不安定的な要因:努力、気分
③全般性の次元
その原因は、別の場面でもコントロール不能な結果の原因となるか?
全般的な要因:能力、性格、努力
特殊的な要因:気分、苦手意識
エイブラムソンらの絶望感理論
改訂学習性無力感理論の発展形として「絶望感理論」が10年後に発表されました。
ポイントは、
・コントロール不能かどうかに関わらず、ネガティブな体験が抑うつを引き起こす原因となる。なぜなら、コントロール不能な体験でもポジティブなものは抑うつを生じさせないからです。例えば、自分がやったことじゃないのに人から褒められた、など。
・抑うつ的帰属スタイル:ネガティブな体験をしたとき原因を自分のせい(内的)と考え、今後も同じような場面で繰り返す(安定的)と考え、別の場面でも悪い結果をもたらす(全般的)と考える傾向。
・抑うつになりやすい素因(素質):抑うつ的帰属スタイルを持つ個人的特性
・状況的手がかり:他の人はどうだったか(合意性)、自分はいつもそうなる(一貫性)、自分は他の場面でもそうなるか(別弁性)
・ソーシャルサポートの欠如:周りにサポートしてくれる人がいない
エイブラムソンらの心理学理論まとめ
■帰属理論・・・出来事の原因を何のせいにするかによって抑うつになるか/ならないか決まる
■改訂学習性無力感理論・・・コントロール不能だという結果の原因を何のせいだと考えるか、によって抑うつになるか/ならないか決まる
■絶望感理論・・・ネガティブな体験の原因を自分のせいと考え、今後も似たような場面で起きるし、全く別の場面でも起きると考える人は、抑うつになりやすい。自分だけができなくて、同じ場面でいつもできなくて、他の場面でもできない、という状況的手がかりも影響する。
参考文献:「自分のこころからよむ臨床心理学入門」丹野義彦・坂本真士著