「小児期逆境体験」とは、子ども(18歳未満)の時に経験した虐待やネグレクト、機能不全の家族内で育った体験を意味します。小児期逆境体験は、大人になって、さまざまな病気やメンタルヘルスに影響が出ると言われます。
小児期逆境体験は、英語の「Adverse Childhood Experiences」の日本語訳です。「逆境的小児期体験」と訳されることもあります。省略してACE(エース)またはACEs(エーシス)と呼ばれます。
小児期逆境体験(ACE)10項目
小児期逆境体験のスコアは以下の10項目で確認できます。
- 十分な食料や清潔な服がなく、世話をしてくれる人がいないと感じていましたか?
- 離婚、置き去り、死別などで親を失いましたか?
- 同居していた人に、うつ病・精神疾患のある人や、自殺を図った人がいましたか?
- 同居していた人に、アルコールや薬物(処方薬含む)の問題がある人がいましたか?
- 同居する親や大人が、互いに叩く・殴る・暴行する、または危害を加えると脅し合うことがありましたか?
- 同居していた人が刑務所や拘置所に収監されたことはありましたか?
- 同居する親や大人から、暴言を吐かれたり、侮辱・けなされたりしましたか?
- 同居する親や大人から、叩く・蹴るなど身体的に傷つけられましたか?
- 家族の誰からも愛されていない、大切にされていないと感じていましたか?
- 望まない性的接触(身体を触られることや性交など)を受けましたか?
(参考:Adverse Childhood Experience Questionnaire for Adults日本語訳)
小児期逆境体験ACEスコア
上記の10項目に当てはまるか数え、10点満点中何点かでスコアがわかります。
機能不全家族の中で育ったり、虐待やネグレクトを受けた体験があれば「1」、なければ「0」でカウントして、合計したものがACEスコアになります。[*1]
スコアが高いと身体的・精神的な健康にリスクがあり、アルコール依存や自殺傾向など問題行動の背景として考えられています。
小児期逆境体験の影響
上記の10項目からACEスコアが4以上の人は、全くない(スコア0)の人と比較すると、ネガティブな影響が見られることがわかっています。
ACEが4つ以上当てはまる人は、全くない人に比べ各症状のリスクが何倍跳ね上がるか:
| うつ(4.6倍) アルコール依存(7.4倍) 自殺傾向(12.2倍) 薬物使用(4.7倍) 喫煙(2.2倍) 肥満(1.6倍) |
虚血性心疾患(2.2倍) 脳梗塞(2.4倍) 慢性肺疾患(3.9倍) 肝疾患(2.4倍) 糖尿病(1.6倍) 性感染症(2.5倍) がん(1.9倍) |
参考:The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study(Felitti, 1998)
こどもが家庭内で暴力や虐待をたびたび長期的に経験した場合、危険な場面で生き延びるための「闘争・逃走・フリーズ(fight or fl ight or freeze)」反応が長期的に反復してしまい、コルチゾール(ストレスホルモン)の過剰分泌が続いてしまいます。
このストレスホルモンの調節異常により「長期的には骨粗鬆症や消化性潰瘍、海馬の萎縮とそれによる宣言的記憶(陳述記憶)の欠陥など、生体にとって有害な病態や障害を引き起こしてしまう」[*2] 恐れがあるとされています。
また、行動上に現れる、多動や注意の問題、否定的な自己像を持っていたり、コミュニケーションの困難なども指摘されています。
参考:
*1 小児期逆境体験とは何か?
*2 八木淳子「小児期逆境体験が心身の健康に及ぼす影響」2025
